Kizuki-au 築き合う Collaborative Constructions
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国際芸術祭「あいち2022」連携企画事業

在日スイス大使館は、スイス連邦工科大学チューリヒ(ETHチューリヒ)のGramazio Kohler (グラマツィオ・コーラー) 研究室と東京大学のT_ADS 小渕祐介研究室と共に、常滑市内の会場でインスタレーション「Kizuki-au 築き合う-Collaborative Constructions」を開催します。建築におけるデジタルプロセス、人とロボットとの協働、技術的・文化的相互作用を追求するスイスと日本の協働プロジェクトです。

Collaborative Constructions (Collaborative:協働、Construction:建設)

私たちが生きるこのグローバルな社会は新たなフェーズを迎えています。以前より脆弱になった世界で、コミュニティが国境を越えていかに複雑に結びついているか、お互いがいかに依存しているかが、パンデミックによって明らかになりました。同時に、オンラインでのコミュニケーションが広く行われるようになり、隔離や断絶が浮き彫りとなった時代において、技術がいかに人を再び結びつけるかが示されました。そこで、いつでも、どこでも、誰とでも会話をすることができる、この新たな環境の中、社会における建築の伝統や役割を再考し、捉え直すことを試みました。

「Collaborative Constructions (Collaborative:協働、Construction:建設)」は、2つのインスタレーションを通して、創造的、革新的、あるいは個人的な、技術を用いる新たな建築のあり方の実証プロジェクトです。技術が自然と人間を結びつける、地球規模で取り組まれている新たな建築のあり方に寄与するスイス連邦工科大学チューリヒ(ETHチューリヒ)と東京大学による2つのプロジェクトは、どちらも人とロボットとの協働作業で制作され、さらに未来を見つめながら過去との関わりをも実証するものです。

ETHチューリヒ グラマツィオ・コーラー研究室:Prof. Fabio Gramazio、 Prof. Matthias Kohler、Hannes Mayer (プロジェクトリーダー)、 Matthias Helmreich (ファブリケーション・コンピューターデザインリーダー)、Matteo Pacher

東京大学 T_ADS 小渕研究室:小渕祐介准教授、小俣裕亮、高木秀太

清水建設株式会社:中島忠大、大橋一智、黒木光博、濱智貴、山下美帆、田中広夢、遠藤広大、津畑慎哉、長澤伸行

SJB Kempter Fitze:Franz Tschümperlin

Lukas Ehrle ERNE AG:Thomas Wehrle, Steffen Hermann

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ETHチューリヒ グラマツィオ・コーラー研究室

Kizuki-au 築き合う—Collaborative Constructions image
地震や嵐に耐えられるよう設計された建物は、周辺の地域や風景を活気づける塔状構造物。日本の縁側のような木製テラスは地域の人々の集いの場に。© MONTAGE Inc.

木造骨組みの3階建ての建物は、ネジなどの金属部品使用しない、ロボット工学時代の大工仕事を再考し実現。優れた木造建築を持つ日本の長い伝統と知識が、スイスのデザインとデジタル技術を用いて復興することで、木造建築物に対して素材効率と実現率の高いアプローチが可能となります。コンクリートと鋼鉄でできた既存の建築物に代わる持続可能な建物として、木造の高層ビルを作る新しい方策を推進するものです。

© Gramazio Kohler Research, ETH Zurich
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建物を構成する5つの木造骨組みモジュールが、千を超える特注の木製エレメントによって成立し、世界的に有名なETHチューリヒのロボティック・ファブリケーション・ラボでプレハブ工法を用いて建設されました。

スイス連邦工科大学チューリヒのマティアス・コーラー教授とファビオ・グラマツィオ教授の率いる研究グループは、2005年以来、建築におけるロボット工学とデジタル・ファブリケーションの最先端を走り続けています。彼らのロボット工学ラボは基礎研究から試作品作りや建築までをてがけ、デジタル時代の汎用ツールとしてのロボットの能力を追求する建築家・研究者にも刺激を与えています。これまで森美術館、ポンピドゥーセンター、パレ・ド・トーキョー、ロイヤル・アカデミー・ロンドン、ベネチア・ビエンナーレ、ストアフロント・ギャラリー・ニューヨーク、V&Aダンディーなどで展示されている。

Webサイト:グラマツィオ・コーラー研究室

東京大学 工学系研究科 建築学専攻 T_ADS 小渕祐介研究室

©東京大学 T_ADS小渕研究室
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やきもの工場に囲まれた中庭に続くエントランスに設置される、木製の柱と梁で構成された門のような構造物。通り側と中庭側の梁には、数多くのネックレスのような陶器が吊るされ、昔ながらの暖簾(のれん)を想像させます。この陶製ののれんは、来場者を迎え入れるとともに、温度調節を行う環境装置にも。梁に設置したミストノズルから陶器へ噴射した水分が気化する際、ミストと陶器の蒸散冷却効果によって、門の周囲は4-5℃涼しくなると見込まれます。

©東京大学 T_ADS小渕研究室
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人々の身体的個性をデザインに反映させるため、体格も体力も様々な子供と大人に、1本のネックレス状の陶器を持ってもらい、それをスキャンしてデータ化しました。そうすることにより、各々の身体的個性に応じた様々なサイズや形状のネックレスがデザインに加わります。その様々なネックレスは、コンピュータによって構造的に最適な設置場所が計算され、それを受けてロボットが梁に穴を開け、人の手によって1本ずつ吊り下げられていきます。

小渕祐介准教授が率いる東京大学建築学専攻の小渕ラボ―T_ADS。人間の能力と技術との関係に重点を置きながら、革新的かつ統合的な共同建築手法を研究しています。 建設会社との共同開発の結果として生み出された一連のパビリオンは、技術に対するクリエイティブなアプローチによって世界的に認められています。彼らのプロジェクトは出版物によって広く紹介されるとともに、ニューヨークのクーパー・ヒューイット美術館、北京、ロッテルダム、ベニスでのarchitecture biennials、チューリヒ・デザイン美術館、東京デザイナーズウィーク、バルセロナ・デザイン美術館、ポンピドゥーセンターなどで展示されています。

Webサイト:T_ADS 小渕研究室

建築は生きた知識

ETHチューリヒと東京大学が、常滑市の脱工業化の遺産に向き合うこの協働は、共感という概念を拡張することによって、その土地を捉え直すものですー土地の人々、伝統、歴史、環境、文化のすべての結びつきは、製造や建築におけるデジタル工程を経て具体化されます。建築は生きた知識の一形式、生きていることの一つの表現となるのです。 

空間演出

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展示されたインスタレーションを訪れるだけでは知ることのできない、作り手の記憶に残った「気づき」を、インスタレーションが展示されるこの場所に「築く」ことを志向しました。パフォーマンスを通して、観客の皆様に、このプロジェクトのプロセスに携わってきた方々の想いを少しでも伝えることができれば幸いです。(小尻健太)

ダンス&サウンドスケープ:小㞍健太 (ダンサー・振付家)

インタビュー協力:斉藤淳一 (建築・木材責任者)、佐藤昌英(足場工事担当者)、Alessandra Gabaglio(ETHチューリヒ)、小俣裕亮(T_ADS 小渕祐介研究室)、高橋優子(在日スイス大使館)*録音/挿入順

挿入曲:J.S.Bach - French Suite No.5 G major

Kizuki-au 築き合う—Collaborative Constructions image

1999年ローザンヌ国際バレエコンクールにてプロフェッショナル・スカラシップ賞受賞。振付家イリ・キリアン率いるネザーランド・ダンス・シアター1に日本人男性として初めて入団。2010年退団後、『Study for Self/portrait』、小㞍健太+森永泰弘『The Threshold』等の創作を軸にダンサー・振付家として国内外で活動。これまでの創作のベースにある「記憶」を「記録」するというテーマをもとに、身体表現と環境との関係性のより幅広い展開を目論み、ジャンルや世代を横断した表現を探求している。他、オペラやミュージカルの振付、「さいたまダンス・ラボラトリ」講師/ナビゲーター 、フィギュアスケート日本代表選手の表現指導、Dance Base Yokohama、穂の国とよはし芸術劇場PLATのレジデンスアーティストを務める。

ふたつの建造物からなる「Kizuki-au 築き合う Collaborative Constractions」プロジェクトに、常滑がもつ歴史的風土を融合させ、新しい建築と歴史ある土地の感性との結び付きを空間演出で表現。会場内に散りばめられた16台のスピーカーと、24台のLED照明、そして隣接する陶芸窯の煙突に設置された投光器は、DMX制御によって連動し、会場に吹く風をセンシングしてリアルタイムで変化。平安~鎌倉時代に作られた常滑焼(古常滑)から着想した「空」「風」「火」「水」「地」というモチーフを色相環に当てはめた照明演出で常滑に吹く風を可視化し、常滑焼を作る際に発生するさまざまな音や、 スイスの自然が奏でる環境音をサンプリングしたアンビエントな音響は、常滑焼の土管の中に仕込まれたスピーカーから独特な反響音となって空間に響いていく。日本古来の「風鈴」や「花火」のように、五感で味わう「涼を楽しむ」という感性を空間全体に落とし込んでいる。

演出に使用したPanasonicの二流体ノズルによる極微細なミスト「シルキーファインミスト」は、粒子径が細かいことで気化が速く近づいても濡れにくく、空間に漂いやすいという特徴を持つ。これにより、暑さ対策だけでなく演出装置としても多分野での活躍が可能に。この技術を使用した空間演出では、他にドバイ国際博覧会(2021-2022年:BIEアワード展示部門金賞受賞)やMilano Salone(2018年:Best Tecnology賞受賞)がある。

プロデューサー:大田俊吾(Montage Inc.)
ディレクター:落合正夫(Montage Inc.)
テクニカルディレクター:赤川智洋(A-KAK)
サウンドデザイナー:中西宣人 (A-KAK)、唐神一樹
技術・機器提供:パナソニックホールディングス株式会社

詳細:株式会社モンタージュ プレスリリース

1994年設立。国内外の大型イベント、アートインスタレーションを数多く手掛け、映像を基点とした空間演出、体験設計を行うクリエイティブスタジオ。PanasonicのシルキーファインミストとのコラボレーションではMilano Salone 2018 「Air Inventions」Best Tecnology賞、ドバイ万博日本館展示演出においてはExhibition Design 金賞を受賞。土地や人の持つ歴史や背景、感性などを演出として昇華し、新たな体験を生み出し続けている。

Webサイト:株式会社モンタージュ

会期

7月30日 (土) — 10月10日 (月・祝)

会場

常滑やきもの散歩道 一 菁陶園近く (愛知県常滑市栄町7丁目地内)

Vitality.Swissについて

本プロジェクトは、在日スイス大使館・ETHチューリヒ・東京大学が清水建設の協力と共に実施するものです。また、2025年の大阪・関西万博へ向かうスイスのVitality.Swissプログラムのひとつとして開催されます。気になるVitality.Swissの全容は9月22日に本サイトで公開いたします!それまでSNSでお会いしましょう。ニュースレターの登録(下部ボタンをクリック)もお忘れなく。